錆びた釘

 

 私の住んでいる小屋の暖房は 薪ストーブ一つだけだ。

番小屋などで使われている 薄い鉄板の安価なもの。

燃料の薪は 雑木 針葉樹 

そして 工務店から運ばれてくる廃材。

寒い冬には どんどん燃やしたい。

薪はいくらあってもいい。

燃え付きもいい よく乾いた廃材はとてもありがたい。

 

廃材に打たれた釘を見ると

いつも頭に浮かぶのは 

ソローの2年余りの森の生活。

 

19世紀半ば 

アメリカ マサチューセッツのウォールデン池の側に

ソローは小さな小屋を建てた。

 

古い木材と古い釘。

古い釘を叩いて伸ばし それを大切に使った。

道具を借りたら よく研いで返した。

随分前に読んだ本で 記憶は曖昧だが

さほど 間違ってはいないだろう。

錆びた釘を叩いているソローの姿が見える。

 

私の前に積まれた古い木材と

そこに 打ち付けられた錆びた釘。

顔を近づけて見る赤茶けた釘は

周りの風景に溶け込んで 

じっと何かの音を聞いている様な姿だ。