冬のフード付きのコートは
すでに仕舞った。
暖かい日が続いた後に。
それではと
ゴソゴソと引っ張り出した
毛糸の靴下で
ワークブーツの中は温かい。
朝ご飯の前に
カメラを持って近くを歩こう。
手を広げて
「やっと起きたんだね」と
私を待っている雪を纏った山。
花粉をたっぷりと着けた
鉄錆び色の杉。
枝に淡い緑の葉を着けた
黒すぐり。
タチツボスミレの淡い紫の花は
雪に押しつぶされた。
植物達は
もうすっかり春仕度を終えて
「さあ」と出番を待っているのに。
水を含んだ春の雪は
冷たい空気だけを残し
陽の光でどんどん溶けて行く。