アナーキーな小屋

この先に人が住んでいるのか?と思う様な坂道山道を登り、やっと辿り着くのがうちの小屋だ。

 

この季節、寒暖の差は激しくあるけれども、樹々は分刻みで様子を変え、野の花は律儀に季節の花を咲かせる。

街から車で一時間の距離なのに辺境の様をした、野の花がひっそりと咲き緑に埋まった場所に、これも又ひっそりと建っているうちの小屋を訪れる友人、知人は多い。

 

雑誌に出て来る山小屋の風情もない。海辺に建ってはいないがまさに番小屋だと私達は思っている。

訪問者が山小屋風ではないアルミサッシのドアを開けた途端、パッチワークの様なつぎはぎのコンクリートの床に驚き、部屋を仕切る壁がないのに驚き、最小限の家財道具が全然おしゃれでないのに驚き、「人生観が変わった」はまだほめ言葉。「大変だね」と慰められたりする。

 

この小屋を建てるにあたり、自分の趣味志向で固めたりはしなかったが、決してどうでもなれと思ったわけでもなかった。

子供の頃に見たアメリカのドラマ「ララミー牧場」や「ボナンザ」。ラフに作られた小屋にブーツの男達がドカドカと出入りする。あんなのがいいと思った。

 

同世代の知人、友人達にショックを与え続けているうちの小屋に今の若者達は「しびれる」そうである。異空間とも言われているこの小屋は、まさにアナーキーを形にしたようだと私は思う。

 

ラショウモンガズラ
ラショウモンガズラ

雨が山の樹々に霧の様に降る夜、私は何故かこの小さな小屋に守られている様な気がする。
枝に作られた巣の小鳥達、木のほこらに休む熊、クマザサを敷きつめた穴に横たわるイノシシ。
雨の夜、あるいは満天の星空の下、動物達は巣の中で、私と同じ様に心や体を休めているのが・・・聞こえて来る。


平良の椎茸、タケノコ、木の芽
平良の椎茸、タケノコ、木の芽