受難の時

朝、裏の川で鳴き止まない犬達の声がする。

又、鹿が猟犬達に追われている。猟犬の鳴き声の長さ、トーンで、まだ食いつかれてはいないようだ。うちの小屋の北側に流れ出ている谷が針畑川に合流するあたりの冷たい水の中に、鹿が立って動かないと外に出て行った夫が私に言う。私達にはどうする事も出来ない。朝から暗くなるまでその鹿は同じ場所に立ち続けた。やがて犬達の鳴き声もしなくなり、明日の朝には鹿が川に倒れて死んでいるだろうと私達は思った。

翌朝、どこを見ても鹿はいなかった。ここに引っ越して来た最初の冬にも同じ様な事があった。その時の鹿も谷の砂防ダムの流れの中で彫刻の様に動かず、犬から身を守った。

その鹿は、こちらをしっかりと見据え、立派な角に鹿除けネットのロープを絡ませ、歴戦の勇士そのもの。「大したものだ!」

 

一ヶ月半程前に、うちの裏の川縁で蘆(よし)の茎を食べに来ていたイノシシは、狩猟期の最後の日の午後にハンター3人に撃たれた。人家近くで銃を撃ってはいけないという規則があるにもかかわらず、耳をつんざく音が3発した。

堅い桜の蕾
堅い桜の蕾

何時もの年ならフキノトウがあちらこちらに芽を出している今の季節。何回も雪が降り、何回も積もった。今もまだ雪の中である。

 

東北の被災地ではどれ程寒く、冷たく、不安な事かと思う。


ビクトリアケーキ風
ビクトリアケーキ風