山のしめじ

みょうがの花
みょうがの花

あの暑い夏は何だったんだろう。遅れてやって来た秋は、畦道に彼岸花を咲かせ、ススキは赤銅色の穂を青い空の下で輝かせている。栗の青いいがが道に転がっている。大きくなったマムシが車にひかれてアスファルト道路にへばりついている。スズメバチがブンブンと羽音をさせて、アトリエの羽目板の隙間に入り込む。谷筋の我が家は夕方が早い。4時になるとすっと冷気が降りて来て、夜になるとストーブに小さな薪を燃やす。

 

うちの小屋の周りに根付いた秋の茗荷にクリーム色の花が沢山ついた。茗荷と共に刻んで、村の人からいただいた新米の炊きたてに混ぜ込む。

 

 

一皿でスイートポテト
一皿でスイートポテト

別の所からいただいたさつま芋。薄くいちょう切りにしてチンしマッシュポテトにする。牛乳、バター、砂糖、シナモンを加えてよく混ぜる。耐熱皿に入れ上に玉子の黄身を塗る。普段のお菓子なので裏ごしはしない。生クリームも使わない。

220度のオーブンで焦げ目がつくまで焼く。ぷっくりと膨らんだ黄色のお菓子。ケーキの様に放射状に切って食べる。

山のしめじ
山のしめじ

毎年この季節になると山に分け入り茸を採るAさん。沢山採れた時も、採れなかった時も、必ずうちにお裾分けをしてくれる。腐葉土や苔がついたしめじは炊き込みご飯にしても、スープや味噌汁に入れても、プリプリ、コリコリ、ヌメヌメとして食感、味共にスーパーのしめじとは別物である。

このAさんの鼻の中に去年癌が取り憑いた。入院し、がんの治療を受けた。しかし、何時か耳は聴こえなくなり、目も見えなくなる。片方の頬が腫れ、肌の色も悪い。しかし、決して愚痴を言わない。うちに来て黙ってコーヒーを飲むAさんを見ていると、暗い心の中が見える様な気がする。

しめじについた土を洗いながら思う。「来年の秋も山へ入り茸が採れるんだろうか、Aさん」


フウロ
フウロ