初夏の匂い

林道の入り口
林道の入り口

朝起きて小屋の扉を開ける。むっとする程の濃密な熟れ過ぎた果物の様な匂い。あちこちに咲いている,そしてうちの小屋の裏にも咲いている満開のタニウツギの匂いだと気がついたのは、去年の今の季節だった。その匂いに誘われて,満開の花の周りをミツバチ、クマバチ、蝶々、名前を知らない羽の虫達がブンブンと羽音をさせて蜜を吸いに来る。

道を歩いていてもいつもと違う匂いがする。一口では言い表せない。若葉から新緑に変わった樹や草の元気のいい匂い。

 

京都から朽木までにトンネルが四つある。最後の坂下トンネルを抜けると道の両側は山で、葛川に沿ってゆるく蛇行しながら国道が走る。フロントガラスの前には、山に挟まれた川の上に空が広がっている。車で朽木と京都を行き来していてその匂いの違いを一番に感じさせられるのが坂下トンネルを抜けた時だ。窓を開けて走る今の季節、トンネルを抜けた途端甘い匂いが私の鼻の奥に飛び込んで来る。

 

何年も前、アメリカのニューメキシコに行った事がある。空港に降り立った途端、空気が甘い爽やかな香りに包まれているのに気がついた。私がいた一週間程の間,ニューメキシコの何処に行ってもその香りは漂っていた。街の人にその話をすると,そんな事は感じた事がないと言う。ニューメキシコにはピニョンという松が群生している。その松の葉の匂いだと後から分かった。

 

自然は言葉を持たないけれど,色や香りや音や響きで私達に語りかける。それを聞く人,聞かない人、様々である。

のいばらの花
のいばらの花