サケビの峠

サケビの林道から 
サケビの林道から 

平良を真ん中にして、その北と南の集落から山向こうの集落に行くには、少し前までは「さけび峠」を越えた。今、60,70代の人達も子供の頃、朽木の中心地にある本校や遠足に行く時にこの峠を越えた。荷物もこの峠を越えて運ばれて来た。細い山道をよく越えたものだと思う。そのさけび峠の南側に林道工事が進行中だが、今は事情があって中止している。日本のあちこちで行われている、公共工事の為の公共工事。村人の話を聞いているとどうもそう言う工事らしい。

去年の丁度今頃、中途で工事がストップしている林道に、薪を集めがてら登ってみた。出来立てのアスファルトの林道は軽トラでスイスイ登れる。車から降りると、下に広がる景色の奥深さに改めて驚き、晩秋の薄い光を浴びて山々が神々しく連なっているのに見入ってしまった。写真の中の2本の白い筋は右が針畑川、左が県道。写真の集落は北平良で、うちの小屋は南平良にあるのでここからは見えない。今は車で京都まで50分。車もない昔、この峠からこの山の連なりを見て、ここの村人達は何を思ったのだろう。ある日、80代の村の女性が私に言った。「堅田はいいな、広うて明るうて。湖が見えて」。バスもまだ通っていない頃に堅田に行った時の印象である。この場所から見る山の連なりを見ているとこの女性の言葉がよく分かる。新しい文化はこの村の伝統を壊した部分もあるかもしれないが、その反面、「昔は遠かった所」を近くに引き寄せもした。

不思議な名前の峠「サケビ」。朽木にまだ朽木氏というお殿様がいた頃、村人はこの峠で税を取り立てに来る役人を見張り、その姿が見えると峠を「さけび」ながら走っておりたそうである。「朽木さんが来たぞー」「朽木さんが来たぞー」。知らない人物が見えると「来たぞー」「来たぞー」。この話は針畑の村人なら誰でも知っている。ついこの間の話の様に話されるのを聞きながら、ここでは時間がゆっくりと流れているのを感じる。

 

工事中の林道
工事中の林道

夜の楽しみ仕事
夜の楽しみ仕事

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