「独居老人スタイル」都築響一著

「独居老人スタイル」都築響一著 筑摩書房
「独居老人スタイル」都築響一著 筑摩書房

 

眼光鋭くこちらを見つめる人

多分 ゴッホだろう。

 

この表紙とタイトルに惹かれ

図書館から借りて読んだ。

 

東京スタイル」で名を馳せた

都築響一の ゆったりとした取材で

興味深い16人の人生が語られる。

 

アーティスト スナック・ママ 雑貨店経営者

劇場館主 劇場お掃除担当者 流し 漫画家

バー店主 道化師 日本舞踊家 津軽三味線奏者

 

都築響一が会った「独居老人」達。

   『大して裕福ではなかったけれど 小さな部屋で

   若い時からずーっと好きだったものに埋もれて

   仕事のストレスもなく 煩わしい人間関係もなく

   もちろん将来へ不安もなく 要するに毎日ものす

   ごく楽しそうに暮らしている 年齢だけちょっと

   多目の元気な若者なのだった。』

   『幸せな大家族の一員でいられるなら それはそ

   れで結構。でも 厄介者扱いされながら 居心地

   の悪い大きな家に住む位なら 金もなし 家族

   もなし。好きな場所で好きな様に暮せばいいじゃ

   ないか。どこの誰にも気兼ねなく。』

   『あえて独居老人でいること。あえて空気を読

   まない事。それは縮みゆく 老いていくこの国で

   生きのびるための きわめて有効な生存のスタイル

   かもしれないのだ』

と まえがきで著者は記している。

 

16人の登場人物の中で 強烈な印象を受けたのは「首くくり栲象」さんの 首吊りパフォーマンス

身体表現だ。

自分の家の庭の木で 首吊り(首くくり)を何十年にもわたって演じる。

身体表現芸術だと理解は出来ても 首くくりさんの家 庭

風貌 全てが余りにも暗黒 闇の世界なのだ。

 

登場人物の殆どが 金持ちになる事 有名になる事 高い地位を得る事を目指していない。

能動的に 活動的に生きている人から見れば

世捨て人の様な 無意味な生き方と見えるかも知れない登場人物もいるだろう。

 

私は思う。

「普通」とは何なのか。

「標準」とは何なのか。

そんなものはないのだ。

 

道路に転がっている小石にも 

一つとして同じものがない様に

人の生き方も 一つとして同じものはない。

 

「独居老人スタイル」的人生を歩むには

私は余りにも弱く 平凡だ。

しかし

この本に登場した16人の生き方を

私は 充分に肯定的に考える事は出来る。