一寸先は闇

結論を先に言ってしまおう。

2月の終わり、日本中が寒さに震え、雪に翻弄された頃だ。

凍結した下り坂でスリップし、ハンドルが制御不能になり、対向車線のトラックの荷台の後側に、私の車のハンドル側が追突した。分厚い鉄板のボルボならいざ知らず、私の車は薄い鉄板でおおわれた軽のジムニーだ。タイヤの上の鉄板に大きな穴があき、中が見えていた。

トラックの30前後の運転手さんが恐い顔をして降りて来たが、ジムニーからのっそりと現れたのが白髪のオバアさんだったからだろう、急に穏やかになった。

朝9時、雪が散らつく道路で相手の運転手さんと警官と私とのやりとり。惨めだった。

 

もと来た道を運転して我が家に帰る。夫は「怪我がなくて良かった、良かった」と言った。

去年、車の事故を起こしたアメリカ,ヴァーモント州のテレサに事故の一部始終を書いたメールを送った。思いやりがいっぱいの返事がきた。

もし、私が反対の立場なら「怪我がなくて良かった」と言えるだろうか?。「不注意だったんじゃないの」と言うかもしれない。

テレサの様な思いやりに溢れたメールを書けるだろうか?

私はやさしい人になろうと思う。

 

山の中の細い道のあちこちに「落石注意」の標識が出ている。いくらこんな標識で注意を促されても、落ちて来る石は防ぎようがない。

北海道、東北での大雪で沢山の人が亡くなられた。ニュースを見ながら「何と言う事だ」と思う。2011年の東北地方地震,津波。楽しいはずの旅行での熱気球の事故、「落石注意」等々。私の前を走っていた車はスリップしなかった。思いもかけない「一寸先は闇」だ。

修理工場に行った車はもうすぐ帰って来るだろう。暖かくなれば道路も凍結しない。大丈夫だよと思いながら、又、同じ所で滑るんじゃないかと思ってしまう。

4WD、スタッドレスタイヤ、マニュアルトランスミッション車。雪でも、凍った道でも大丈夫だと過信していた。

 

今年の2月程、春の来るのが待ちどうしいと思ったことはなかった。