植物は栄え、ひぐらしは鳴き

キュウリ畑
キュウリ畑

村の奥さんから頂いたきゅうり苗は痩せた畑にもかかわらず、雨が降れば上に伸び、蔓を絡ませ、黄色の花を付けた。そして又雨が降ると、その花がマッチ棒程の実になり、今や一人前のきゅうりになった。明日の昼にはこのキュウリが器に中に盛られるだろう。

パリ、パリ。その音と歯ごたえ。今から私の耳の奥で鳴っている。

イエロースカッシュ
イエロースカッシュ

今年も又、アメリカのテレサから届いたYellow Squashの種。去年より上手く育っている様に思う。痩せた畑を肥えさせ、そこに葉が茂る様を思い浮かべ苗を移した。これらも雨が降る度大きくなり、もう少しで黄色の花をつけるだろう。

でも、カボチャや瓜類はどうして黄色の花なんだろう。

 

今年は村の奥さん達に種のお裾分けはしなかった。実が出来ても調理法が分からないと言われる。どの人も皆「どぶ漬けにしたよ」。そのどぶ漬けも見慣れない野菜だと御主人達は食べない。食生活も又、非常に保守的な所である。

夕方5時を回るとヒグラシが鳴き始める。キ、キ、キ、キ。あっちでも、こっちでも、川筋に響き渡る何十奏もの声。

引っ越して来る前、この声が響き渡ると「さあ、帰る用意をしないと」とあわただしかった。同じ声を聞いているのに、あの当時と心を過る思いが違う。せわしなさと不安感をかき立てたヒグラシの声は、今は夕方を報せる声に変わった。

 

深夜、ラジオも消し小屋の中の音がしなくなると、外で遠慮がちな声で鳴いている鳥。ジーとも、グーとも例えようのない密かな声。何の声かなあ?

翌朝、夫にその話をする。「あ、それはトラツグミ」。何故か鳥の名前はよく知っている。

 

音のしない夜の小屋の中。私は、その音を耳を大きくして聴いている。

 

 


ケーキ アマンディーヌ
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