小屋のまわりの花達

コアジサイ
コアジサイ

山の中でゆっくりと、自由に、きままに、のんびりと、仙人の様な生活をしていると思われている。今更声を大にしてそれを否定する気はさらさらないが、兎に角忙しい毎日を送っている。

 

そんな気ぜわしい日々、コアジサイが山や林の斜面に群れて咲いているのに気づく。林の中一面に広がるコアジサイは、濃い緑の葉に、淡い薄紫の花を刷毛でぼかした様に群れている。風が吹くと、斜面全体が揺れている様に見える。一枝折り花瓶に挿すと、水が上がらずに下を向く。「どうぞ折らないで山の中にいさせて下さいよ」と言っている。

ノアザミ
ノアザミ

道路、畦道、山の斜面、どこにでも咲いている野薊。スコットランドの気丈な娘。触ると身にまとった棘で刺す。

 

晴れた日でも、曇りの日でも、雨の日でも、風の日でも、姿も風情も変わらない。凛として、川の流れる音、風の話を聞いている。

ウツギ
ウツギ

ウツギは卯月を名前の由来としウノハナとも呼ばれる。

 

白い釣り鐘の様な花を無数につける。うつむき加減に咲く可憐なこの花は、樹形が悪いと私は思う。ほんの少しの石垣の様な隙間でも、根を張り、枝を伸ばす。そして道路沿いのウツギは、花も葉もいつも薄灰色の砂埃を被っている。真夏の夾竹桃の様に。

オオナルコユリ
オオナルコユリ

オオナルコユリ。名前の通りナルコユリより丈、葉、花はずっと大きい。

初めてこの花に出会った。人目につきにくい場所に咲いているのに、何故かふっとそこに目がいった。長い茎に沢山の花をつけ、強い風に吹かれながら私に声をかける。

「ここですよ!、こんにちわ」

ササユリ
ササユリ

うちの小屋の回りにササユリが咲いているなんて。

 

感動的な出会いをしたのが去年。その場所から少し離れた林の中に今年もたった1本咲いていた。淡いピンクの花びら、細い茎。風に揺れるその姿は山椒大夫に出てくる娘のようだ。
このササユリの回りに幾つもの芽が出ている。来年には数本のササユリと会えるかも知れない。

 

数えきれない花達がこの季節に咲き、次の季節の花達にバトンを渡す。運良く巡り会える幸運。私が気がつかない時には又声をかけて欲しい。
「ここにいますよ」


4色ナムル。お千代さんの乾燥ワラビで。
4色ナムル。お千代さんの乾燥ワラビで。