ソウルの旅(7)

水原崋城(スウォンファソン)と市街
水原崋城(スウォンファソン)と市街

大公園(デグォンウォン)で足が棒のようになった。駅から美術館まで1500m歩き、美術館の中を又ウロウロ歩き、でも、今日の最終目的地は水原(スウォン)。

大公園駅から又地下鉄に乗り、途中でKORAIL(鉄道)に乗り換えると水原に着く。水原は韓国時代劇「イ・サン」で日本でも一躍有名になった。イ・サン、後の聖君正祖(ジョンジョ)が、祖父の英祖(ヨンジョ)の怒りをかい米びつに閉じ込められ餓死した父の為に造った宮殿「崋城(ファソン)」がある。そのイ・サンも水銀で毒殺されこの水原に遷都する事は出来なかった。何とも恐い話だ。

そんな恐い話を想像するのも不可能な程、この水原崋城はかわいい宮殿だ。どれもがこじんまりとコンパクトな造りで、渋いピンクの壁に淡いグレーの屋根瓦。その宮殿が小高い丘を背にして建っている。

 

その丘に続く松林の細い道を上ると、崋城が下に見え、その向こうに水原市街が広がっている。大屋根のサッカー場やスポーツ施設らしい建物がある。高層のマンションがある。大型クレーンがあちこちに立ち、今の韓国の活気をここでも感じる。

イ・サンの母
イ・サンの母

蝋人形の王妃、武官、文官、女官。それらが恐い程のリアルさで展示されている。恐いけどおもしろい。だからシゲシゲと見る。王妃は頭に冠を乗せ、派手な山水画を背に座る。壁は例によってかわいい渋めのピンク。果物を飾り、花を飾る。平民の藁葺き屋根の家とは対照的だ。飾れば飾る程、あらゆる物を持てば持つ程しんどい人生だと蝋人形の王妃を見て思う。

宮廷菓子
宮廷菓子

 

2日目の夜に食べた宮廷料理。王様の為にだけ料理を作る宮廷の中の台所 「水刺間(スラッカン)」。そこで沢山の女性料理人が作ったであろう料理は、思ったよりも質素だった。

その宮廷料理の中のお菓子。生のむき栗、生のくる み、干し柿、飴に近いせんべい。驚いた。生の栗なぞ初体験だ。朽木の猿を思い出す。それらが崋城に蝋細工で展示されている。生のむき栗あり、干し柿あ り・・・。どれもこれも円柱状に積まれ量を誇っているようだ。朝鮮にはあんこのお菓子は生まれなかったんだろうか?伝統菓子でもあんこはなく、蜂蜜を漬け て食べるようになっている。

日本では江戸時代には砂糖を使ったお菓子はすでにあった。朝鮮では砂糖は手に入りにくい調味料だったのか。サトウキビを栽培するには北過ぎるのか。それに代わる食物はなかったのか。

蝋細工の宮廷菓子を前にしてしょうもない事を考えた。

 

水原で有名なプルコギを食べる事もなく、又KORAILと地下鉄を乗り継ぎ、ソウル一の繁華街「明洞(ミョンドン)」ヘ。

私にとって明洞は何の興味も持てない所だった。

人、人、人の間を歩きながら思った。「早くホテルに帰ろう」