ソウルの旅(6)

海苔巻き、餅、蜂の子、貝、おでん・・・
海苔巻き、餅、蜂の子、貝、おでん・・・

ソウル、三日目。

ソウル行きを決めた時、したい事が三つあった。手頃な白磁の器を買いたい、伝統茶を飲みたい、そして、現代美術館に行きたいと言う事だった。

北村(ブッチョン)と仁寺洞(インサドン)で、余りにも簡単に気に入った白磁の器が見つかり、仁寺洞で視覚的にも味覚的にも大満足の五味子(オミジャ)茶を飲んだ。

そして、いよいよ今日、国立現代美術館に行く。ソウルのROTTEJTBは「美術館は遠いので車をチャーターしてあげます。歳だから地下鉄の階段は無理です」としきりと歳だを強調する。「ヘェー、もうそんな歳になったんだ」と思いながらニヤニヤ笑ってその場を過す。

 

地下鉄での50分程のショートトリップで大混雑のソウル郊外、果川市(クァチョンシ)「大公園(デグォンウォン)」に到着。そう言えば今日は土曜日。まるで祇園祭の様な混雑ぶりだ。

「大公園」は緑豊かな丘陵に、遊園地、美術館、キャンプ場、運動場、植物園、動物園等がゆったりと点在する。駅前の広場には屋台が並ぶ。韓国の海苔巻き「キムパブ」、ちくわの様な餅、醤油色の蜂の子、小指の先程の貝、おでん等々。飴、洋服、帽子何でも売っている。

美術館までの道
美術館までの道

緑の街路樹の下を大公園駅から美術館まで1500m。

こんなに気持ちのいい空間が日本に果たしてあるのかなあ?、私が知らないだけなのか。ゴミ一つ落ちてない、缶ジュースの自動販売機も置いてない緑の下を歩きながら「ひょっとして、韓国って『豊か』なんじゃない?」と思う。

カロ
カロ

美術館への緩やかな上り坂の芝生にカロ、リ・ウファン等の現代美術家の作品が展示され、それらは丘陵の豊かな緑の中で「いい場所に落ち着きましたよ」と私に言う。

国立現代美術館
国立現代美術館

石造りの城壁をイメージした様なシンプルな建物が国立現代美術館だ。これをデザインした建築家はこれからの歴史の中で、少なくともこの美術館のデザインに関しては決して笑われる事はないはずだ。「国立でこんなにいい環境の美術館はそうはないぞ」と

階段を登りながら、目の前に現れる重厚でありながら軽やかな建物を見つつ思う。

ナムジュン・パイク
ナムジュン・パイク

中に入ると正面にナムジュン・パイクのテレビモニターを幾重にも積み上げた作品が、それこそデンっと置かれている。韓国を代表する現代作家は、ここでも破格の扱いを受けている。高麗の石塔から影響を受けた作品だと思う。美術界の最先端を行く作品を作るパイク。母国の歴史や建造物を自分の内に消化して形にし、そして概念を込める。

キム・チョンハ回顧展 今まで聞いた事もない韓国の画家の回顧展。しかし、最初の一枚の絵を見た途端、とんでもなく素晴らしい画家だと思った。長い間忘れていた感動。雪岳山(ソラッサン)の山中にアトリエを持ち、そこで生命の讃歌をプリミティブな筆致で描き続けた。ぶ厚くて重い回顧展の作品集を買う。印刷されたキム・チョンハの絵は実物とは程遠い。しかし、初対面の思い出にこれは必要だ。