イノシシは食事中

数日前の事だ。

屋根から落ちた雪を汗をかきかき裏の川に黄色のママダンプで捨てていた。汗を拭いながら雪が転がり落ちて行く様をぼんやり見ていたら、その先にイノシシがいた。

冷たい川の水など気にしない。ひたすらに蘆(よし)の根っこをかじって食べている。固い根っこをお尻を振り降り、一心不乱とはこの事だ。2時間近く川の中で場所を変えながらの食事。

 

まだ雪の降っていない去年の冬の始めの夜。表でゴン、ゴトンと音がする。南北に風が抜けるこの谷筋は風が強い。又、風で木の箱でも揺れているのだろうと思っていた。

そして朝、アトリエの裏の崖が崩れているのに気がついた。

 

食事中のイノシシを見ながら、崖崩れはあのイノシシだと思った。生ゴミを埋めた場所にきっとミミズでもいるのだろう。穴を掘ってもかまわないけど、崖崩れだけはごめんだ。春になり雪が融ければ、又生ゴミを土に埋める夫の日課が始まる。

 

「これからは崖から離れた場所に埋めなさいよ」とイノシシが言う。「分かりました」と夫が答える。

冬の川
冬の川

柚子の砂糖煮
柚子の砂糖煮