金時豆を炊いた

 

10年物のホーキンスの 

茶色の皮の編上靴をいつもの様に履いて

首にぐるぐると毛糸のマフラー。

手袋をした手を ダウンジャケットのポケットに突っ込み

降ったり止んだりの小雪の中を歩き始める。

 

「ポケットに手なんて入れてると危ないぞ」

と 私が私に言う。

 

風は強く 道路に杉の枝が

引きちぎれた様な姿で落ちている。

鳥達の声は聞こえない。

枯れたボロギクの群生が モノクロ写真の様に見える。

 

寒いなと感じたら 

私はいつも ウォーミングアップと称して歩き始める。

すぐに体は暖かくなる。

そして 冷たい風を心地よく感じる。

 

秋に貰った金時豆の新豆。

よく乾いていないのは知っていたが

それを 引き出しに入れていた。

ビニール袋の中で 白いカビにまみれた赤い豆。

水でザバザバ洗った豆を鍋に入れ 

たっぷりの水を張った。

ストーブの上で 機嫌よく

砂糖と少しの塩を吸いながらふっくらと炊けた。