図書館で借りる本の楽しみ

「暮しの手帖」 2022年 6−7月号 71ページ
「暮しの手帖」 2022年 6−7月号 71ページ

 

『ふたつの中心』

  「軽さと重さ」 写真・文 茂木綾子

     安泰寺という禅寺で修行していたときのこと。

     庭の大きな木の下に置かれていた

     車のシートの上に

     読みかけの本がポツンと残されていた。

     『存在の耐えられない軽さ』だった。

     座禅では 重い肉体を

     石ころのようにじっとさせ

     自ら無意味な世界へと分入ることで

     そこらに転がる石や草や虫と等しく

     軽くささやかな存在であることが楽しくなる。

     その本も

     ただそこで風に吹かれているようだった。

 

図書館で数冊の雑誌を定期購読している。

それは好きな連載の文を読む為だ。

「住む。」長田弘の詩が長い間続いた。

ある日 その連載が突然終わった。

長田弘が亡くなったから。

三谷龍二のも終わった。

 

「天然生活」金井美恵子のエッセイに

姉の金井久美子のアート作品が挿絵のように載っていた。

そして これも終わった。

 

先日 借りてきた「暮しの手帖」に載っていた文。

短い文だが 心に残った。

これは連載なのか?

どうして 今まで気がつかなかったのか?