小さな皿の中の大きな世界

 

雁が飛んで行く。

 

波静かな海の中に立つ 鳥居の先は

神社か 家か。

 

何百年も経った大きな松の木。

 

夕暮れ近くの 穏やかな時を

呉須の藍で濃淡をつけ

慣れた筆さばきで

海と空と山と

そして 人の気配まで描いてある。

 

小さな楕円の皿の中の大きな世界。

 

京都寺町二条の角。

40年ほど前

小さな骨董屋の店先で

ふと見つけた一枚の染付けの皿だ。

 

何に使うでもない。

時々 ナッツやチョコレートを入れたり

時々 手に取り眺めている。